本記事では、3つのオンチェーン分析ツール「Dune」・「Flipside Crypto」・「Footprint Analytics」を使用し、どのプラットフォームを使うのがベストなのかを、実際に分析を行いながら比較検証していこうと思います。
はじめに
web3時代では、どのような取引も暗号化された状態で安全にブロックチェーン上に管理されてます。管理されているデータはオンチェーンデータとして誰もが簡単にアクセスすることができ、これらの取引データを扱う際は、オンチェーン分析ツールを利用することで分析や可視化が簡単にできます。また、ブロックチェーン上に記録されたデータは改ざんや削除が不可能であるため、誰がいつどこでデータ分析をしても得られる結果は同じになることが保証されています。
現在のところ多数のオンチェーン分析ツールが存在しており、暗号資産取引の意思決定や市場のトレンド分析などに使用されています。では、多数のオンチェーン分析ツールの中で何を使用するのがベストでしょうか?それぞれの分析ツールでデータの集計や可視化の結果は同じになるのでしょうか?
今回は3つのオンチェーン分析ツール「Dune」・「Flipside Crypto」・「Footprint Analytics」を使用し、データ分析の結果が等しくなるのかを検証しながら、どの分析ツールがおすすめかを考えたいと思います。
検証結果
結論からお伝えすると、オンチェーン分析ツールのベストな選択肢はFlipside Cryptoです。
3つのオンチェーン分析ツールを比較するために、「Uniswap v3においてEtereumの取引を行なったアクティブアドレス数が2022年以降どのように推移しているか」のテーマに沿ってデータの抽出・加工を行いました。
検証の結果、データ取得にかかる時間とアクセス可能なデータ期間の観点でFlipside Cryptoをおすすめしたいと思います。
あくまで現時点での結果であるため、今後のアップデートなどで結論が変わる可能性は十分にあります。
また、今回の検証は1つのテーマに沿って分析を行なったものであるため、あくまで参考程度に捉えておいてください。
分析ツール | データ取得にかかる時間 | アクセス可能なデータ期間 |
---|---|---|
Dune | 約20分 | 全期間 |
Flipside Crypto | 約10秒 | 全期間 |
Footprint Analytics | 約30秒 | 直近3ヶ月 |
オンチェーン分析ツール
Dune
Duneはブロックチェーン探索のための強力な分析ツールであり、膨大なトランザクションから必要なデータの探索や可視化が可能です。
ユーザーはSQLクエリを使用して独自のデータベースにアクセスしデータの抽出を行います。作成したテーブルは簡単にチャートに変換することができ、テキストや画像と共にダッシュボード上に保存しコミュニティー内へ共有ができます。
Duneの使用方法については以下の記事で詳しく紹介しています!
データ抽出
Duneではデータの抽出はSQLクエリを使用します。
各ブロックチェーンの生データにアクセスするにはtransactionsテーブルを使用します。
Ethereumの場合はethereum.transactionsとなります。(公式ドキュメント)
SELECT
date_trunc('day', block_time) as day,
COUNT(DISTINCT "from") as active_addresses,
COUNT("from") as transactions
FROM
ethereum.transactions
WHERE 1=1
AND block_time >= '2022-01-01'
AND block_time < CURRENT_DATE
AND success = 'true'
GROUP BY 1
;
2022年以降に取引が成功したトランザクションに対して、ユニークなアクティブアドレス(送信元)とトランザクション数を日毎に抽出しています。
クエリ実行結果は以下です。実行時間は約22分かかりました。
グラフ作成
Duneでは各軸に対応する列を指定するだけでグラフが作成できます。
今回はエリアチャートを用いてアクティブアドレスの推移を可視化しています。
上記の内容はDuneのプラットフォーム上で確認してみてください。
→https://dune.com/queries/1243079
Flipside Crypto
Flipside Cryptoはオンチェーン分析ツールが利用できる事に加えて、データ分析によって暗号資産を獲得できるバウンティプログラムに参加できるプラットフォームです。
Duneのプラットフォームと同様に、ユーザーはSQLクエリを使用したテーブル作成とチャートやダッシュボードの作成が可能です。また、各暗号プロジェクトの課題に対して解答をダッシュボードに作成することで、その評価に応じたバウンティが獲得できます。
詳細については以下の記事で紹介していますので併せてご覧ください。
データ抽出
Flipside Cryptoではデータの抽出はSQLクエリを使用します。
各ブロックチェーンプロジェクトごとにテーブルのスキーマが設計されています。Ethereumのトランザクションデータにアクセスするにはethereum.coreテーブルを使用します。(公式ドキュメント)
SELECT
BLOCK_TIMESTAMP::date as dates,
COUNT(DISTINCT FROM_ADDRESS) as active_addresses,
COUNT(FROM_ADDRESS) as transactions
FROM ethereum.core.fact_transactions
WHERE 1=1
AND BLOCK_TIMESTAMP >= '2022-01-01'
AND BLOCK_TIMESTAMP < CURRENT_DATE
AND STATUS = 'SUCCESS'
GROUP BY dates
;
日毎のEthereumのアクティブアドレス数とトランザクション数を抽出しています。
Duneの時に使用したクエリと大きな違いはないことがわかります。
クエリの実行時間は約10秒でした。
Duneが約20分かかっているので、Flipside Cryptoのクエリ実行時間は短いことがわかります。現時点で理由までは調査できていませんが、Flipside Crypoのデータベースの設計の仕方などに工夫があるのかもしれません。
グラフ作成
Flipside Cryptoでも各軸に対応する列を指定するだけでグラフが作成できます。
Duneで作成したグラフと見比べると、全く同じグラフが作成できています。
上記の内容はFlipside Cryptoのプラットフォーム上で確認ができます。https://app.flipsidecrypto.com/velocity/queries/1e307e20-4ece-45ff-bf4d-ce28c122b9bc
Footprint Analytics
Footprint AnalyticsはSQLを使用せずにドラッグ&ドロップの簡単な操作でデータの抽出や加工ができるオンチェーン分析プラットフォームです。
主な機能はチャートとダッシュボードであり、オンチェーンデータをチャート機能で可視化し、分析結果をダッシュボードにまとめることで、コミュニティ内で共有することができます。
詳細については以下の記事で紹介していますので併せてご覧ください。
データ抽出
Footprint Analyticsではデータの抽出や加工はクリック操作で行います。
(指定した条件をもとに自動的にSQLクエリに変換してくれる機能もあります。)
各ブロックチェーンの生のトランザクションデータにアクセスするには末尾が_transactionsであるテーブルを使用します。Ethereumの場合はethereum_transactionsとなります。(公式ドキュメント)
Filterではフィルタリングの条件を指定します。
今回は、2022年1月1日以降であることと取引が成功したトランザクションという条件を指定しています。
Summarizeではデータの加工や集約を行います。
今回は、ユニークなアクティブアドレス数(送信元)を日毎に抽出しています。
グラフ作成
Visualizeをクリックするとデータの抽出が始まります。実行時間は約30秒でした。
チャートを見ると2022年6月以前が見切れています。
これはethereum_transactionsのテーブルを保有している期間が直近90日であるからです。
DuneやFlipsede Cryptoと比べると、Footprint AnalyticsはSQLクエリを使用せずに簡単にデータの抽出ができるものの、全期間のデータが取得ができないことがわかりました。
上記の内容はFootprint Analyticsのプラットフォーム上で確認できます。
https://www.footprint.network/chart/Ethereum-%7C-Daily-Active-Address-fp-29500
まとめ
今回は3つのオンチェーン分析ツールを使用しながら、それぞれの分析方法の比較検証を行いました。
どのプラットフォームでも同じ結果が得られるものの、プラットフォームごとに仕様が異なることがわかりました。
今回の検証ではデータ取得にかかる時間とアクセス可能なデータ期間の2つの観点で評価しましたが、その他の観点でDuneやFootprint Analyticsが優れている点もあります。
Duneは既存のユーザー数が最大規模で、参考になるダッシュボードが数多くあるため情報収集には最適です。
Footprintはクエリを使用すぜにクイックな分析が可能なため、初手として直感的にデータを理解するには最適です。
分析ツール | データ抽出時間 | データ保存期間 | ダッシュボード | 操作性 |
---|---|---|---|---|
Dune | △ | ◎ | ◎ | ◯ |
Flipside Crypto | ◎ | ◎ | ◯ | ◯ |
Footprint Analytics | ◯ | △ | ◯ | ◎ |
オンチェーン分析ツールは目的に応じてベストなプラットフォームを選択することが重要ですね。
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