【Web3×ファッション】データ利活用で面白さが倍増するNFTとファッション

今後NFTとファッションを組み合わせたデジタルファッションの業界が、一気に盛り上がってくることが確実視されています。環境問題や今後のメタバースの拡大など、盛り上がる要素が揃いつつあることが要因となっています。

単純にNFTとの相性がいいだけでなく、ここにデータ分析ができる余地をしっかりと見越しておくことで事業拡大の可能性を最大化させることができると考えられます。

本記事ではWeb3におけるファッションの可能性をベースに、そこに組み合わせられるデータについて検討していき、今後のデータサイエンスの可能性を感じてもらえればと思います。

NFTとファッションの組み合わせは必然!?

Web3の文脈で最も話題を作っているのがNFTです。このNFTとファッションの組み合わせについて、これまでさまざまな角度でその未来が語られてきました。そこで語られるファッション業界で問題視されていることを整理すると、Web3でのファッション改革は必然的な流れなのかとも思わされます。

Fungible AnalystではNFTとファッションの可能性というよりは、必然的にくる流れであることをあくまで事実として捉えて、それが実現された後の世界でどのようなデータ分析の余地があるのかを整理していきます。ここではまずその背景整理を行います。

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環境問題という明確な課題

まず大きく課題と言われているのは「環境問題」です。

ファッション業界における環境問題は常々問題視されています。世界で排出されているCO2量の約10%、前排水量の約20%がファッション産業になります。

石油産業についで世界第2位の環境負荷とされており、これをどう解決するべきかはこれまで長い間議論されてきました。

以下は世界で最も汚れた川として知られる、インドネシアのチタルム川の様子です。この川が汚れ始めた1970-1980年、上流には世界中で流通しているファッションブランドの繊維工場が複数乱立し、染料などで汚染された水など様々なものが川に流されていました。

あくまで一例ではあるものの、このように目に見えて環境被害が出ているのが現状です。ファストファッションがメインになった今、洋服は使い捨てに近い状態で利用されることが増えました。加えて、8割近くの商品が廃棄の対象となる産業であると言われていることからも、環境問題への配慮が今後必須となり、現状からの変化が必要とされています。

デジタルファッションに”廃棄”は存在しない

ファッションにNFTの仕組みを導入することで、大きな問題とされている環境問題に一石を投じることができると考えられています。

NFTはNon-Fungibel Tokenの略称であり、非代替性トークンと言われるものです。これまで簡単にコピーをすることが可能であったデジタルコンテンツや、大量生産で一つ一つのモノに独自性がなかったモノなどに代わって、それら一つ一つに価値を持たせる技術として期待されています。

Web3ブームの中心にあるのがこのNFTと言っても過言ではありません。

このNFTの特性をファッションに掛け合わせることで、廃棄の少ない環境に優しいファッションの世界が実現されるのではないかと期待されています。

Web3で話題になっているのはNFTだけでなく、メタバースがあります。デジタル空間に形成されるもう一つの世界であるというイメージです。

メタバース空間では、場所にとらわれずに現実と近いコミュニケーションを取ることができるため、自宅からバーチャル店舗で買い物をしたり、バーチャルイベントに参加したりといったことができるようになります。

出典:sandbox.game

メタバースに接続するためにはPCやスマホなどのデバイスと、ネット環境があればいいため、場所にも時間にもあまり左右されずに利用できるようになります。メタバース上で簡単に人とコミュニケーションを取れる点は、メタバースの最大のメリットの一つと考えられています。

現実世界がそのままデジタル上に再現されることをイメージすると、そのアバターが着用している洋服などが「次のファッション」として注目されます。

デジタルファッションに利用されるデータは、コピーできれば簡単に複製できます。つまり、これまで大量生産・大量消費されていたファッションのように、生産するために生じる環境問題が一部解消されると考えられています(消費電力側での環境問題は提言されている)。

Decentralandで行われたファッションウィークの様子 : https://www.vogue.co.jp/fashion/article/us-vogue-metaverse-fashion-week-experience

これに加えて、NFTを掛け合わせることで複製・コピーできてしまうデジタルファッションを唯一無二なものに変化させることができる点が注目されています。

データとして複製されない保証がつくことで、デジタルであるにも関わらず「一点もの」が存在する世界ができあがります。これによって、ファッションでの自己表現とそれに伴う権利が保証されるようになるのです。

では、そこに対してどのようなデータが取得され、どのようなデータ分析の広がりが見えるのかを考えていきましょう。

NFT×ファッションに生まれるデータ

ここではNFTをファッションに掛け合わせた時に生まれるデータから、データサイエンティストの活躍する場所がどのように生まれてくるのか、データ分析の余地がどこにあるのかを検討していきます。ここでは2つの事例を考えていきます。

メタバースの服装につくプレミアをデータで予測する

NFTアートは今や投資対象としての価値を持っています。有名アーティストや有名なコミュニティが制作しているNFTアートを持っていることがステータスであり、その価値をそのまま資産価値として考えられる状況です。

投資対象としての価値があるのであれば「将来的にどのような価値になるか?」という予測をしたいニーズが高まります。ここにバリューを出せるのがデータサイエンティストです。

https://toukei-lab.com/python_stock

データサイエンティスト講座の初級編後半あたりで実施される「機械学習における株価予測」があります。そのぐらい当たり前のようにデータを用いた予測は当たり前のように実施されます。

分析の流れとしては以下が一例になると考えられます。

  1. 過去にヒットしたNFTアートの取引履歴を大量に収集する
  2. それらの変動をコンピュータに学習させる(機械学習・深層学習)
  3. アートの特性などを読み込ませて価格変動を考慮して予測する

もちろん外的要因などによって変動することはありますが、自然な変動を予測していくという意味では上記で可能だと推測されます。

株価予測も、過去の数年分のデータを用いて学習し、それによって変動を予測していく作業を行い、明示的に外的要因を学習に入れ込む必要は必ずしも必要とは言えません。もちろん、さらに精度高く行うためには、判断材料が多くある必要があるので、外的要因(Web3関連企業の株価や仮想通貨相場など)を入れ込むことも必要かもしれません。

上記のような分析が進められる背景としては、NFTなどはブロックチェーンでその真贋性が担保されており、ブロックチェーンの中身を見ていくことで過去の取引(トランザクション)を「誰でも」確認できるからです。

このように外部から取引内容を確認できるものをパブリックチェーンといい、これらで構成されているOpenseaなどのサービスは、トランザクションを分析することができます。

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特にさまざまなNFTアートのトランザクションを引っ張って機械学習を進めたい場合、CSVを比較的安価に書き出すことができるDune Analyticsが良さそうです。

Fungible Analystでも、近いうちに機械学習によるNFTアートの価値変動予測を行ってみようと思います。

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リアルと掛け合わせたNFTファッションの流通をデータで見る

デジタルファッションだけでなく、リアルな世界での製品とNFTを組み合わせる事例もいくつか出てきています。これによって現物の販売と、デジタルデータの所有の2面性が発生し、データの多様性も生まれてくることが考えられます。

リアルとの掛け合わせで有名な事例はNIKEに買収されて有名になったRTFKT(アーティファクト)です。RTFKTはデジタルスニーカーにNFT要素を付与したコンセプトで一躍注目を集めた企業です。

RTFKTで発行・販売されたデジタルスニーカーのデータをNFT化させるだけでなく、それに付随して実際のスニーカーを1足作成できる権利も所有できる仕組みになっています。スニーカーを製作した後でも、そのNFTを所有及び販売することも可能という取り組みです。

これは、NFTアートとしてのスニーカーの価値を最大化させる取り組みだけでなく、「実物のスニーカーをプレミアが着くようにブランディングして販売経路に乗せ、その結果オリジナルのデジタルスニーカーのデータの価値が上がる」というような、一点もののスニーカーとしての価値を最大化する取り組みに活かせる方向があるということです。

ちなみに、RTFKTはWAX blockchain(https://on.wax.io/wax-io/)というサービスと一緒にデジタルスニーカーのeコマースサイトを立ち上げています。WAXは自然保護とかカーボンニュートラルに対して積極的にとりくんでおり、ファッション業界が抱える問題を解決したい意志が感じられます。

(この辺りの起業当初のストーリーが投資家目線で見れるnoteがめちゃめちゃ面白かった :https://note.com/teppeitsutsui/n/na9305d3cdb2f)

これによってこれまでリアルなファッションの流通で利用されていた顧客属性のデータ(年齢や地域、購買履歴など)を分析し、最も価値が高くなりそうなセグメントに売り込んでいくことが可能になります。

出典:株式会社エアークローゼット : https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000158.000011623.html

株式会社エアークローゼットは明治大学と連携して、これまでの顧客データをベースに、AIを用いたレコメンデーションを構築しています。

この推薦システムをベースに、スタイリストがお客様に提案をすることで、購買を促進させる取り組みを行っています。Web2ど真ん中のデータサイエンスの事例です。

リアルな世界でのデータサイエンスと、Web3目線でのデータ解釈が生まれることも想定されます。そのため、Web3特化のデータサイエンスではなく、Web2で取得され見えてきた世界にWeb3のエッセンスが加わったファッションアイテムをどうやって迎合させていくかという新たなチャレンジに取り組むことができるデータサイエンティストが重要なポジションをになっていくことも想定されます。

これ以外にも1点ものでなくても実際のTシャツなどにNFTアートをワンポイント入れて販売したり、現実の世界とデジタルアートとの融合はどんどん出てくると推測されるので、データサイエンティストとしてはこれまで蓄積されたデータに対する理解も含め、Web3に視野を広げていく必要があると考えています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?様々な要因からWeb3におけるファッションの在り方は大きく変化していくことが予想されます。既にアパレルメーカーにおけるデータサイエンティストの活躍は見受けられており、Web3においても同様の需要が発生すると考えています。

ただ単にメタバースなどでのファッションをWeb3のファッションと捉えるのではなく、ブロックチェーンなどを用いた現実世界でのファッションへの革命などが出てくると面白いのではないかと思いました。

どちらからデータ分析需要が出てくるかはわからないので、データサイエンティストとして構えておけるノウハウやビジネス感度は持ち合わせておきたいです。

参考文献

NFTの教科書

https://amzn.to/3OwToFy

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