ブロックチェーン上のトランザクションデータは誰もが取得可能であり、膨大なトランザクションデータの活用方法は様々です。今回はブロックチェーンデータ分析に注目し、注目すべきブロックチェーン分析プラットフォームを紹介します。
ブロックチェーンデータ分析について
パブリックチェーンとプライベートチェーン
ブロックチェーンはパブリックチェーンとプライベートチェーンに大別できます。
パブリックチェーンとは、管理者がおらず世界中の誰もが自由に参加可能な完全オープンなネットワークです。そのため、誰もがネットワーク上のブロックチェーンデータにアクセス可能であり、ブロックチェーンが目指す開かれた取引そのものであると言えます。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などはパブリックチェーンの代表的な例です。
プライベートチェーンとは、管理者が存在する参加できる人や企業を限定したネットワークです。閉じたネットワーク内での取引となるため、トランザクション処理能力の低下や不正取引などの課題を回避できます。単体の組織や企業内での活用に向いており、主に金融機関での導入が進んでいます。オープンソースのHyperledger FabricやbitFlyerが開発したmiyabiなどがあります。
パブリックチェーン分析の課題
ブロックチェーン上には日々のトランザクションデータが蓄積されており、今後も指数関数的に増加していくと考えられます。以下はビットコインのマイニングが開始された2009年以降のトランザクションデータの推移です。数日ごとに1ギガバイト近く増加していることがわかります。パブリックデータに対しては誰もがデータ取得が可能であるものの、これらの膨大なデータに対する分析はデータ処理能力、ストレージ、データ理解の観点で容易ではないと考えられます。
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ブロックチェーンデータ分析プラットフォーム
上記の課題に対して、既にブロックチェーンデータ分析を提供するプラットフォームが存在しており、データ抽出・分析・可視化までを実現できます。今回は5つのサービスを紹介します。
Dune Analytics
- 企業名称:Dune
- 設立年度:2018年
- 資金調達:B (6,940万ドル)
- 企業価値:10億ドル
- 主要国:ノルウェー
Dune Analyticsはブロックチェーンに記録された暗号資産・NFTなどのデータを分析できるデータ分析プラットフォームです。Web3データを誰もが利用可能とすることを目指しており、コミュニティベースのオープンソースプロバイダーとしてデータへのアクセスや分析結果の公開を無料で提供しています。現在はEthereum、Polygon、Binance Smart Chain、Optimism、Gnosis Chainをサポートしており、これらのブロックチェーン上で取引される暗号資産・NFT・DeFiを扱うことができます。
Duneにはデータ抽出・グラフ描画・ダッシュボード作成の3つの機能があります。各ブロックチェーンデータはPostgreSQLデータベースに集約されているため、データテーブルから目的のブロックチェーンを選択することでクエリによるデータ抽出が可能です。また生データから独自のテーブルを作成することもできます。抽出したデータから棒グラフや散布図などの基本的なグラフを作成でき、クエリ結果と作成したグラフをダッシュボードに保存することで、Duneのコミュニティ内に公開することができます。Duneのコミュニティではトレーダー・アナリスト・データサイエンティストなど様々な人々がいるため、彼らの分析結果を参考にしながら必要に応じて相互に組み合わせた分析が可能となります。
Dune Analyticsに関する詳しい解説と、プラットフォームの利用方法はコチラにまとまっていますので見ながら進めてみてはいかがでしょうか?
Glassnode
- 企業名称:Glassnode
- 設立年度:2018年
- 資金調達:-
- 企業価値:-
- 主要国:スイス
Glannnodeはブロックチェーンにおけるオンチェーンメトリクスと財務メトリクスから、市場全体のトレンドを把握・理解することを目指したデータ分析プラットフォームです。EthereumやBitcoinなどの暗号資産に加えて、ERC-20に関連する様々なトークン・エコシステムのデータを扱うことができます。分析プラットフォーム以外のコンテンツとして、専門家による暗号市場分析やレポートを定期的に発信するGlassnode Insightsや、オンチェーンデータメトリクスや財務メトリクスを理解するためのGlassnode Academyという教育コンテンツを提供しています。
Glassnode Studioはブロックチェーン分析ツールであり、主にチャート・ワークベンチ・ダッシュボードの3つの機能があります。チャートでは各種メトリクスの時系列プロットを作成し、市場トレンドや直近の変動を簡単に可視化します。ワークベンチでは独自のグラフを作成したり、任意の関数や指標の組み合わせが可能であるため、より高度な分析ができる点が特徴です。作成したグラフはダッシュボードとして集約することができます。また、テキストや画像を追加することで独自のダッシュボードを作成することができます。その他、お気に入りの指標の変動をトリガーし通知するアラート機能や、各メトリクスの最新情報を一覧で表示するパルス機能も使用できる。
Glassnodeに関する詳しい解説と、プラットフォームの利用方法はコチラにまとまっていますので見ながら進めてみてはいかがでしょうか?
Nansen
- 企業名称:Nansen
- 設立年度:2020年
- 資金調達:シリーズB (7,500万ドル)
- 企業価値:7.5億ドル
- 主要国:シンガポール
Nansenはブロックチェーン上の暗号取引データをAIアルゴリズムの導入によって分析し、リアルタイムダッシュボード上での意思決定を行うことを目指したデータ分析プラットフォームです。GoogleCloudのサービスを用いることで、1日あたり最大1PBのブロックチェーンデータ解析を可能としています。EthereumやBitcoinなどの主要な暗号資産に加えて、DeFi・NFT・DAOなどのWeb3における新たなエコシステムに関する分析も可能です。最近ではNFTエコシステムが盛んなSolanaのブロックチェーンに対応しました。
Nansenの分析プラットフォームのインターフェイスは非常にクリエイティブな点が特徴です。任意のブロックチェーンとメトリックスを選択することでダッシュボードが作成できます。また、NFTプロジェクトごとに取引量や価格の推移なども簡単に見ることができます。分析の自由度は小さいですが、非常に多くの種類のプロジェクトをリアルタイムに可視化できる有益なサービスです。
Nansenに関する詳しい解説と、プラットフォームの利用方法はコチラにまとまっていますので見ながら進めてみてはいかがでしょうか?
Anyblock Analytics
- 企業名称:Anyblock Analytics
- 設立年度:2018年
- 資金調達:Blockdaemonによる買収
- 企業価値:-
- 主要国:ドイツ
Anyblock Analyticsはブロックチェーン上のNFT取引データを可視化するデータ分析プラットフォームでおり、主要なオンチェーンメトリクスをシンプルに表示するインターフェースを提供します。2021年11月にブロックチェーン管理プラットフォームのBlockdeamonによって買収され、既存アプリケーションとのコラボレーションによりChainlinkやTheGraphといったサービスを提供しています。
FlipsideCrypto
- 企業名称:Flipside Crypto
- 設立年度:2017年
- 資金調達:シリーズA (5,000万ドル)
- 企業価値:3.5億ドル
- 主要国:アメリカ
Fripside Cryptoはブロックチェーン上の暗号取引データを可視化するデータ分析プラットフォームを無料で提供しており、ユーザーが最も関心のある暗号プロジェクトから簡単にデータインサイトを作成・共有できることを目指しています。コミュニティメンバーの質問に対する答えをデータから導くことでインセンティブが得られる仕組みがあり、プラットフォームとしての成長を図っています。NFT・DeFi・DAOといった主要なブロックチェーンエコシステムのデータを扱うことができます。
Fripside CryptoはDune Analyticsと同じように、データ抽出・グラフ描画・ダッシュボード作成の3つの機能があります。各ブロックチェーンデータはPostgreSQLデータベースに集約されているため、データテーブルから目的のブロックチェーンを選択することでクエリによるデータ抽出が可能です。またJavascript/TypeScript・Python用のSDKが開発されており、他のサービスとの組み合わせによって今後発展していくと考えられます。
今後のブロックチェーンデータ分析
今後は暗号資産だけではなくNFT・DeFi・DAOなどのブロックチェーンエコシステムに対する分析も活発になると考えられます。また、各プラットフォームにおいてSDK開発やAPI連携などの機能が拡充によって、機械学習や数理最適化などの高度なデータサイエンスが可能となるでしょう。Web3時代のデータサイエンティストの需要がこれから向上していくといいですね。
各分析プラットフォームの使用方法などについて、個別の詳細な解説記事をご用意しているのでそちらを参考にご自身で分析を始めてみてはいかがでしょうか?
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